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一般的に、自閉症あるいは自閉症スペクトラム障害(ASD)の方を指すときに、「レインマン」のような人、無口な人、もしくは自傷行為があったり攻撃的な人と言われるだけではなくなってきました。自閉症であっても他者から距離を置く必要はありませんし、感情がないわけでもありません。自閉症領域における科学的な調査の結果、私たちの自閉症に関する知識は年々変わってきています。
現段階では、自閉症はその程度の激しい変化や機能のレベルから、スペクトラムもしくは障害の連続体であると見なされています。ASDという言葉は、自閉症という言葉の代わりに用いられるようになりました。自閉性症候群、小児分裂障害、広範性発達障害、自閉性障害もしくは特定されない広範性発達障害というような診断はすべてASDに含まれます。ASDではその症状や問題はそれぞれによって変わりますが、一般的に言われる主だった問題点は、他者に関心を示さない、言語・非言語的コミュニケーションの欠如・反復行動や興味、関心の狭さと、大きく3つに分けることができます。
自閉症の成り立ち
Leo Kanner(AP香港支局へのリンク)が11人の患者の観察をした時に初めて「自閉症」という言葉を提唱しました。カナーは論文(1943)で、「幼児自閉症」として生まれつき社会的関心に興味を抱かない子供がいるのではないかという仮説を立てました。カナーはこの他者と関わり合うことに問題を抱えている子供たちを観察しました。また、カナーはコミュニケーションや抵抗を変えると大きく混乱してしまうことも説明しています。しかし、調査の結果、カナーが最初に提唱していた仮設に間違いがあることがわかりました。次に、カナーは彼が観察した子どもの両親が社会的に成功者であり、経済的にも裕福であったので、母親と子供の関係に欠けているものがあるのではないかと仮定しました。現在では、自閉症はどのような経済状況の方にもありうる障害の一つだと理解されていますし、母親と子供の関係の問題ではないことが分かっています。
診断基準
DSM-IV-TR※ 299.00 自閉性障害
A.(1)・(2)・(3)から合計6つ(またはそれ以上)、うち少なくとも(1)から2つ、(2)と(3)から1つずつの項目を含む。
(1) 対人的相互反応における質的な障害で以下の少なくとも2つによって明らかになる。
(2) 以下のうち少なくとも1つによって示されるコミュニケーションの質的な障害:
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話し言葉の発達の遅れまたは完全な欠如(身振りや物まねのような代わりのコミュニケーションの仕方により補おうという努力を伴わない)
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十分会話のある者では、他人と会話を開始し継続する能力の著明な障害
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常同的で反復的な言語の使用または独特な言語
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発達水準に相応した、変化に富んだ自発的なごっこ遊びや社会性をもった物まね遊びの欠如
(3) 行動、興味、および活動の限定された反復的で常同的な様式で、以下の少なくとも1つによって明らかになる。
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強度または対象において異常なほど、常同的で限定された型の1つまたはいくつかの興味だけに熱中すること
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特定の機能的でない習慣や儀式にかたくなにこだわるのが明らかである。
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常同的で反復的な衒奇的運動(例:手や指をばたばたさせたりねじ曲げる、または複雑な全身の動き)
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物体の一部に持続的に熱中する。
B.3歳以前に始まる、以下の領域の少なくとも1つにおける機能の遅れまたは異常
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対人的相互反応
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対人的コミュニケーションに用いられる言語
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象徴的または想像的遊び
C.この障害はレット障害または小児期崩壊性障害ではうまく説明されない。
※ American Psychiatric Association 2000 Diagnostic and statistical manual of mental disorders, 4th ed., text revision (DSM-IV-TR). American Psychiatric Association. (高橋三郎他訳 2002 DSM-IV-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル 医学書院)
一般的な問題点の特徴
社会的関心
ASDと診断されたすべてのお子様が一人でいることを好むというわけではありませんし、中には社会的意思を強く持つお子さんもいます。また、年齢に適した社会的興味や関心においてスキルの欠如が見られるお子さんもいます。事実、ASDの大人の方を概観すると他者との交流があることはその方の生活の質の決定的要素として重要となります。以下の兆候は一般的に報告されるものですが、ASDと診断された方すべてに当てはまるというわけではありません。
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社会的相互依存の欠如:しばしば、他者との関わりは一方通行になりやすく、そのほとんどは周りの大人や友だちに支えられています。また、社会的なギブ・アンド・テイクが欠けており、年齢に適していないこともあります。
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他者と楽しみを分かち合うこと、他者への関心や達成の欠如が見られます。ASDの方の中には、他者と分かち合うという行為は稀ですが周りに関心があるものを持ってきて見せたりします。
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様々な社会的関わりにおいてアイコンタクトの使用の困難性:これは全体的なアイコンタクトに欠けているというわけではありません。それぞれのASDの方は、初めはアイコンタクトのスキルをうまく使いますが、社会的関わりの中で、アイコンタクトを維持していく、もしくは止めてしまいます。
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場の(言語・非言語的)空気を読むことの困難性:表情、体の位置、社会的距離を含みます;全体的な雰囲気から社会的な動きの分析と社会的な設定やそれに関わっている人が別のものであるという認識に困難性を感じます。
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物事を予測することの困難性:ASDの方の中には自分が見ているものを他者は見ていないと理解することに困難性を感じます。また、他者が考えるのと同じように考えたり、感じたりすることも難しいのです。
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感情の統制の困難性:中には興奮しすぎてしまう人もいますし、不安や怒りを感じすぎてしまう方もいます。また、普通の人が感情を表現するような場面でも感情を表現しない(できない)という方もいます。
コミュニケーション
コミュニケーションの欠如は連続的に起こります。個人差もありますが、会話のスキルが発達しない、1語文もしくは簡単な文章でコミュニケーションをとる、そして、言語発達の遅れなどを感じる方がいます。また、スペクトラムの方の中には、十分に言語スキルはありますが、他者に対して適切に表現することが苦手な方もいます。しかし、ASDの方の中には、効果的な介入を行い、限界だと思われていた会話スキルが発達し、十分な会話スキルを持ってコミュニケーションが取れるようになった方もいます。 |

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しばしば、言語スキルが欠如しているからといってコミュニケーションがそうだとは限りません。会話スキルが生まれつき欠如していても、ジェスチャーや周囲のものを使ってそれを埋め合わせすることはできますし、ASDのお子様はジェスチャーを使わずに埋め合わせをするかもしれません。例えば、ストレスを感じた時に癇癪を起したり、攻撃的になったり、他者を邪魔するような不適切な行動で自己表現をするかもしれません。また、ASDのお子様の中には十分な数の語彙を獲得しているにもかかわらず、基本的な欲求(ものを頼むなど)を伝えることが苦手なお子様もいます。他者に聞かれれば、物事や出来事の説明はできるかもしれませんが、日常のコミュニケーションにそれを利用することは難しいかもしれません。例えば、周囲の他者に物の所在を説明することができるなどです。
自閉症を持つお子様には、エコラリア(オウム返し)をするお子様もいます。言語で同年代から遅れが見られないお子様にも、解釈・言葉の使い方に関しての問題も報告されています。例として、「手を貸して」と言われた時に手を差し出すなど、ことわざや言い回しを言葉のままとらえてしまうことがあります。声のトーン、ジェスチャー、しゃべり方など、言語以外での領域の見方を誤ってしまうこともあり、冗談や皮肉を理解できないこともあります。会話は、会話している人それぞれの興味を共用するものよりも、自分の興味だけを伝えるものに制限されることがあります。その場にあっていない敬語、または崩れた言葉を使うなどの言い方の選択を誤ってしまうことから、風変わりで適していない話し方をしてしまうこともあります。声の大きさやトーンを間違えてしまうことも、社交性の上での問題としてあげられます。
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反復行動
ASDの方の中には、奇異な運動や身体的な癖があります。例えば、手をひらひらさせる、つま先で歩く、手を注視する、目の端で物を見る、指先ではじく、物に光を当てて見るなどです。また、車のタイヤが回っているのを見たり、自身の目の近くに物を置いて、ある部分だけを反復的に細かく見たり、様々な物(例えば、洋服や車など)の概念に関心を向けたり、ライトの点滅をじっと見たりすることも含まれます。
中には独特の特徴を持たない方もいますが、物を反復的に動かすことに夢中になる方もいます。例えば、ドアの開け閉め、物を並べる、物を詰める、スイッチをカチカチするなどです。反復行動の中には、その行動自体は意味を持たないというものもあります。例えば、パネルを上げるためのスイッチを押す(機能的なものは除く)、特定の活動をする時には、はっきりした理由はないが決まった場所、もしくは決まった道具で行う、出かけるときは決まった道順で行くなどです。ASDの方の中には、興味や関心の幅が極端に狭い方もいます。そして、しばしば、自身の関心のあることについては情熱的で夢中になります。そして、その関心事は他者には容易に受け入れられないようなものであることもしばしばです。例えば、バスの通り道、墓石や恐竜などです。
症状
診断手段の発達により、ASDのお子様のほとんどが3歳までには診断されていますし、生後12ヵ月未満のお子様も診断されたという報告もされています。親御さんはまず、自身のお子様が一般的に言われるお子様の特性と違うことがあるということに気が付きます。このようなお子様は、一般的なお子様の発達のパターンとは異なります。お子様の異なった特徴は、早ければお子様が生まれて数カ月で気がつくことができますが、しばしばお子様が1歳から3歳の間に気がつくことが多いようです。親御さんの中には、お子様の発達が突然後退した、もしくは社会的に無関心になり始めたなどと感じる方もいます。また、中には、ある一定の発達段階に達すると発達が止まってしまったと感じる方もいます。"practice parameter:screenong & diagnosis"という研究論文の中で、Filipek博士はすぐに評価ができる項目をいくつかリストにしました。
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生後12か月までにおしゃべり、指さし、もしくは他のジェスチャーをしない
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生後16か月までに一語文を話さない
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生後24か月までに2語文を話さない(エコラリアは除く)
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どの年齢であっても、言語の欠如、もしくは社会性の欠如が見られる
Toddlers(M-CHAT)の自閉症を分類するための6項目からなるチェックリストは自閉症/PDD(広汎性発達障害)を診断するのに一番良いとされています。
このような症状のある小さなお子様は専門家に会い、ASDの診断をしてもらうのが良いでしょう。
有病率
疫学者のV.WongとS.Huiが2007年に発表した香港で行われた研究によると、1986年から2005年までの間で10000人の15歳未満の子どもの有病率は16.1%でした。そして、オーストラリアと北アメリカでもこれに近い有病率が報告されています。また、アメリカの疾病統制センターではASDの有病率は1000人のうち2~6%であると推測しています。
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